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「偏執者」のいない時代の本作りはもうゴメンだと言いたい

仕事が立て込んで某社に泊まりっぱなしのがけっぷち社長である。

どういうわけか、明日に校了やら入稿やらがまとめて押し寄せてきている。
いわゆる修羅場状態。
で、こんなとき、ぽっかりと時間が空くことがよくある。
いまがまさにその典型。
待ちの時間だ。

こんな修羅場のときくらい、みんな仕事に集中すりゃいいじゃねえかと思うんだけど、そこに空気の読めない爆弾を落とすヤツが出てくる。
「会社辞めたい」
ああ、そうですか、そりゃ辞めたいならしゃあない。
だが、そんな話は修羅場を明けてから言っても遅くないんじゃないか?
とりあえず、俺はいま関わってる仕事を全部片づけたいのだ。

その人物、困ったことに本日出社せず。
電話で話したところ「身体を壊した」という素っ気ないお返事。
しかも、そっちから「誰か人を手配してほしい」と言われる始末だ。

人を手配するのも実はおいらの仕事である。
こんな業界なので、仕事を途中で投げ出すヤツも数限りなくいる。
情報の更新やら政治的都合やらで記事を差し替えることだって日常茶飯事だ。
マンパワーと時間には限りがあるから、助っ人を呼んで、力技で乗り切ることも多い。
逆に自分自身がその助っ人として呼び出された経験もかなりある。

今日も知り合いに電話をかけ「ページの修正」という名目の「ページ作り直し×約20ページ」作業を「24時間拘束・総額×万円」という形で無理やりねじ込んだ。
ちなみに、この雑誌、校了日は(延ばしに延ばした状態で)7日の朝イチだ。

ただ、輪転機がまわっていたってまだ安心はできない。
印刷所の現場に睨まれたって、あたくしは止めるときには止める。
でも、そんなときに妙なアドレナリンが出るというタイプでないと、この業界で長く食ってはいけないだろうと思う。

ちなみに、この雑誌に関しては、出版社の担当者がテコ入れという形で日々様子を見にきている。
雑誌が売れない時代だけにしかたないのだが、どうも売れ行きが悪いようだ。
そんなさなかに編集長が持病の悪化でダウン。
本来なら事情に通じている編集部の人間でどうにかしてほしいところだったが、なにやら両者の思惑がぶつかっている様子もあり、いつの間にかおいらが介入することになった。

実は、同じように面倒を見なければならない編集部が同じ社内にもうひとつ。
しかもスケジュールはほとんど同じだ。

そして、本来ならべつの人間にやってもらうはずだった文庫本があるが、このしわ寄せで誰も手がつかなくなり、結局あたくしの元に戻ってきた。
これも入稿は明後日である…。

で、上述したように、おいらの仕事には人事のようなものもある。
とくに、人手が足りなくなったとき、人員配置と仕事の分担を考えるのが非常にきつい。
人間のキャパは一緒ではないが、負担はある程度平等にしなくては不満もストレスも溜まる。

と、こんなことばかりを考えていて思ったのだ。
なんでみんな、この仕事を「負担」と考えるのかと…(全員ではないけど)。
本を作りたいから、こんなヤクザな業界に入ったんじゃないのだろうか?
だったら、自分のやりたいように作れるページが増えるのはむしろ喜びなんじゃないかと。

そのへんの考え方では、上に登場した出版社の担当者ととても考えがかぶる。
このお方、言ってみれば編集が趣味で生き甲斐で、息をするように本の編集ばかりを考えている狂った男である(一応、褒めているし、本人の前でもそう言っている)。
趣味はまったく合わないことばかりなのだが、お互いなんかに対する執着を感じるのだ。

ただ、大きくおいらと違うのは、基本的に一匹狼タイプの人間で、ひとりでなんでもやってしまう代わりに、組織のなかにいることや、グループを形成するようなことができないことだろう。
だけに、この編集部の人間とも摩擦が起こるわけだ。
言ってみれば「仕事としての編集」と「趣味としての偏執」のぶつかり合いであるわけで。
だから、どうしても一枚クッションを挟まなければならないし、その役目としておいらがいるわけだ。

どっちが正しい編集の道なのかは、あたくしにもよくわからない。
両方ともバランスよく必要なのは確かだが、人間、なかなかそうはなれない。

とはいえ、やっぱりおいらは狂ったほうを求めてしまうかもしれない。
そうやってできた本でなければ、果たして読者を満足させられるのかと思うからだ。

あたくしは、ここ数日、ずっと上がってきたページのゲラを見る仕事ばかりしている。
で、哀しくなったりもする。
ただ写真と文章を並べただけのページとか、とても信じられないような上がりがあるのだ。
実力がなくてそうなってるならまだわかる。
これ、なんにも考えずに作ってるとしか思えないレベルなのだ。
時間もないものだから、なんとかそれをいいものにしようとおいらは作り替える。
そんな記事がすでに5本はあった。

加えて、上述の狂った担当者の要求も当然ある。
それに応えるようにするのも(担当編集者にもよるが)たいていはおいらの仕事だ。
もう、渡した時点で仕事は終わっていると思っているようで、気づけば印刷所とのやり取りや入稿もあたくしの仕事になっている。

正直、人の作ったものを直している作業は苦痛である。
どうせなら、初めから自分で作りたいと思ってしまうからだ。
だが、実制作にかかっていられる時間はまるでないわけで、あたくしは彼らに仕事をさせなくてはならないのである。

なんて考えていたら、本気で金が欲しくなった。
やっぱり、自分で出版社作らなきゃ、なんにもできないなと。
それには、どうやったって金がいるからだ。
金なんかどうでもいいが、少なくともいまなら金があればやりたいことがやれるのも事実だ。

アホなのかもしれないが、おいらはどうしても沈みゆくこの業界で生きていきたいのだ。

別窓 | 哀愁だらけの出版業界 | コメント:0 | トラックバック:0
200902060225
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