「営利企業」ってなんだか知ってる?
言うまでもなく、金儲けを目的に運営されている企業のことだ。
出版という世界は、その歴史もあってか、文化事業のような側面を持っているのは事実なわけだし、いつも心にそれを思いながら仕事していきたいとは思うわけだが、残念ながらそれだけで存在することはできないわけだ。
たとえば、バックに巨大なスポンサーがいて、儲け度外視でひたすら文化貢献だけを目的にやれるような土壌でもない限りは、絶対に無理な話なのだ。
まあ、この導入でわかるように、どうも今日は愚痴っぽい話ばかりで申し訳ない。
仕事も山ほど溜まっていて、もちろんいまも会社にいるわけなのだが、ぜんぜん進んでいない状態だ。
さて、前にある編集部についての話を書いたわけだが、ここがさらにゴタゴタしている。
ふたりが辞めるという話のアップデートとして、またもやふたりが退職を口にしだしたわけである。
もっとも、そのうちのひとりは、近々、実家に戻る予定だと聞いていて、発展的解消のようなものだからいいのだが、問題はもうひとり…しかも編集長である。
辞めてもらったら困るかどうかという話を言えば、現場実務的な意味とはまったく違う政治的理由によって面倒である(そこは詳しく書くことはできないが)。
そいつだけは、少なくとも社の上層部に対する「退職というカード」を持っているわけだ。
よって、非常にずるいことも言えるわけである。
要するに、おいらが打ち出した経費節減方針が気に入らないということのようだ。
そりゃ、誰だって予算を削られたらいい気はしないだろう。
だけれども、いま現在、赤字を垂れ流している状態なのだから、なんらかの手を打たねばならないことは間違いない。
で、ふたりが抜けて、仕事がきつくなるというのもあるようだ。
誌面リニューアルの話もあるわけだが、ハッキリ言っているわけではないが、この少人数じゃ無理であると拒否の姿勢をみせている。
じゃあ、売り上げのほうもそのまま右肩下がりってわけか?
いったいなにがやりたいのか、おいらにはまったく理解できない。
要するに現状維持のまま、たらたらと会社に来て、給料がもらえる状態でいたいってことか?
言うまでもないが、そんなことは無理だ。
うちの規模の会社では、この編集部の赤字が半年も溜まったらアウトである。
要するに、その前にこの雑誌自体諦めざるを得なくなるし、ヘタすれば会社丸ごと危機に瀕することだってあるだろう。
ただでさえ、きちんと仕事をしているというのに、売掛金を抱えたまま吹っ飛ぶ会社があったりして、弊社も苦しい時期だ。
苦しい時期だからこそ、いまやらねばならないことを大出血覚悟でやっているわけで、ほかの社員やスタッフの給料やボーナスに当てたい部分まで再投資しているのが現状だ。
べつに、彼らに恩を感じてほしいとかそういう話ではないが、少なくとも、売り上げを出している社員の給料やら士気やらを犠牲にしてでも勝負を賭けているときに、こういう現実感のない抵抗を続けているってどういうことなのだろうか?
そういうクズは、いろんな形で言い訳をするわけだ。
ボス経由で聞いた話によると「これじゃ外注が食っていけなくなる」というものだったようだ。
ちなみに、出版社における外注とは、誌面デザイナーとかライター、マンガ家、イラストレーター、校正・校閲者などがいる。
外注とは、言ってみれば外部の独立した業者であるわけで、立場で言えば我が社と同じだ。
どちらも、実力に欠けて利益を上げなかったらやっていけず、いずれは淘汰される運命にある。
かつての日本型雇用システムを理想と考えるおいらとしては、社員に対しては会社が責任を持つ部分は山ほどあるだろうし、できる範囲で生活などに支障がないようにしていきたいと思う。
だが、外の業者は、それ自身の責任でやっていかなければならないはずだ。
トヨタのように他社への仕事の制限をかけて囲っていたならともかくとして(もちろん、うちにしても前の会社にしても、どちらも零細企業には違いなく、そんな事実はあるわけがない)。
そもそも、外注への高額すぎるギャラ支払いこそが、この編集部を赤字にしている最大の理由である。
その規模は、現在の売り上げに比して約40%になる。
印刷費は50%を超えているが、そもそもこれは増やす努力をしていかなければならない数字だ。
人件費等を考えれば、これでやっていけるはずがないのは言うまでもない。
外注がどうこうなんて話は、結局のところ詭弁でしかない。
要するに、自分の仕事を増やしたくないから、外注に適当に仕事を放り投げるいまのシステムを維持したいから、そういう甘えたことを抜かしているだけだ。
本がなくなれば、全部アウトだ。
そして、直接関係ないはずのほかの社員たちも被害を受けることになる。
本気で外注のことだけ考えているというなら、自分の財産からギャラの支払いでもなんでもやればいいのだ。
それなら誰も文句なんか言いやしない。
誰かに赤字を押しつけて自分だけいい思いをしようなんてわけにはいかんのだ。
正直、おいらはキレた。
さまざまな政治的理由により、ここはおいらも抑えなければいけないことがわかってるので、刃傷沙汰が起こることはないわけだが、このままじゃ会社がおかしくなってしまう。
こういうずるいクズ野郎、みんなのそばにもひとりやふたりいるんじゃない?
そういうさまざまな問題を鑑みて、とうとうボスはこの時期に人材募集に着手。
要するに、短・中期的な人材入れ替えの方針が決まったってことだ。
総務番としておいらも絡んでいるわけだが、うちのような無視されてもおかしくない企業に対し、数日で50人からの応募をいただいている。
やっぱり、不景気なのだ。
入社時の仕事の出来不出来などはどうでもいいから、情熱のある人が来てくれればいいのだけど。
本に対してでも、仕事に対してでも、生きることに対してでもなんでもいいから、活気にあふれてて、目のギラギラしたヤツを熱望する。
生ける屍のようなヤツがいくらいたって「給料お持ち帰りマシーン」が増えるだけでろくなことがないのだから。
こんなことを言ったら怒られるかもしれないが、結局、クズ野郎(ダメ人間とイコールではない、念のため)ってのは、どういう使い方をしようとろくな結果を生まないものだと、おいらは経験としてそう思う。